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反復性肩関節脱臼の治療や早く治すためのポイント
肩関節が脱臼すると、「反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)」を発症することがあります。
「脱臼するくせがついてしまって、日常生活がままならない…」
「スポーツのせいで反復性肩関節脱臼になってしまった…」
この記事では、上のようなお悩みを抱えている方に向けて、反復性肩関節脱臼の症状や原因、治療内容について解説します。
「反復性肩関節脱臼を改善したい」「少しでも負担が少ない生活を送りたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
反復性肩関節脱臼とは?
肩関節が一度、外傷性脱臼を起こした後に、脱臼を繰り返す病態のことを、「反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)」といいます。
難しい病気だという印象を持つ方もいるかもしれませんが、コンタクトスポーツの経験者に多い疾患のため、悩んでいる方も少なくありません。
そもそも肩関節は、全身の関節の中でもっとも脱臼が起こりやすい関節。
この関節が外れてしまう「肩関節脱臼」は若年ほど起こりやすく、20歳以下で初回の脱臼が起こると80〜90%が反復性に移行するといわれています。
以下では、なぜ肩は脱臼しやすいのか、肩関節の構造と反復性肩関節脱臼の病態について踏まえながら解説していきます。
また、治療法と早く治すためのポイント、再発の予防についても理解していきましょう!
肩関節の構造と脱臼しやすい理由
肩関節とは、ここでは「肩甲上腕関節」のことを指し、肩甲骨と上腕骨がつくる関節です。
肩甲関節窩という受け皿と、上腕骨頭という球体がかみ合って関節を動かしています。
肩関節は全身でもっとも広範囲に動かせる関節。
可動域が広い理由は、受け皿である肩甲関節窩が小さくて浅いためです。
上腕骨頭を支える範囲が狭く、可動域の制限が少ない特徴があるからです。
この受け皿を補強するために、関節唇(軟骨様の堤防)、関節包(関節を覆う袋)、腱板(筋肉)、補強靭帯が発達しています。
関節の構造上、骨頭が前下方に逸脱しやすい傾向にあります。
そのため、肩関節の脱臼は前下方型が圧倒的に多いとされています。
反復性肩関節脱臼の病態
反復性肩関節脱臼は、ほとんどのものが外傷性の脱臼が原因で起こり、続けざまに何度も脱臼してしまいます。
初めて脱臼したときには、圧倒的に前下方脱臼が多く、反復性脱臼もほとんどが前方下方型で起こります。
これは、初回脱臼時に、バンカート損傷という状態になりやすいためです。
バンカート損傷とは関節を補強する役目がある関節唇・下関節上腕靭帯が受け皿である関節窩から剥離損傷することです。
損傷が不完全に治癒するために下関節上腕靭帯の機能不全が起きてしまい、脱臼を繰り返すと考えられています。
脱臼の症状
脱臼の症状としては、以下のようなものがあります。
- 肩の激しい痛みや腫れ
- 関節可動域制限
- 肩のしびれ
- 血行障害
- 腕を動かすときの不安定感
反復性肩関節脱臼の原因
肩関節脱臼は、外傷によるものと、明らかな外傷がない場合に分けられます。
一度、肩関節が脱臼すると、関節唇や靭帯などの軟部組織が剥離し、安静にしても治らないことが反復性脱臼(脱臼ぐせ)になる原因です。
外傷が原因のもの
外傷による肩関節の脱臼の多くは、ラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツです。スポーツの際、肩を激しくぶつけ脱臼します。
前下方脱臼では、腕を外側に広げる外転という動きと、肩から腕をくるっと外側に返す外旋という動きを強制されることが原因です。
脱臼回数を増すごとに軽微な外力で起こるようになり、反復性肩関節脱臼に移行します。
スポーツによる接触だけでなく転んだ際に地面に手をついたときや寝返り、上着を着るなどの日常生活動作でも脱臼しやすくなります。
明らかな外傷がないもの
明らかな外傷の経験がなくても、脱臼しやすい人がいます。
特に関節が柔らかい若い女性に多く、多方向への関節が緩みやすく動揺肩(loose shoulder)といわれます。
外傷経験がなくてもテニスのスマッシュや投球などで脱臼することがあり、多くの場合は肩関節の不安感が原因です。
反復性肩関節脱臼の治療内容
肩関節の脱臼は、初回の受傷であれば、一般的に保存療法が選択されます。
三角巾で3〜4週間固定し、患部の修復と安定性向上を図ります。
しかし、保存療法がうまくいかず、修復が不完全であると、反復性に移行してしまうのです。
日常生活やスポーツ活動において脱臼を繰り返し、活動が制限される場合、手術が必要です。
肩関節脱臼の手術
肩関節脱臼の代表的な手術方法を、2種類紹介します。
鏡視下バンカート修復術
脱臼によって損傷した関節唇・関節包・靭帯などの軟部組織を修復します。
軟部組織を元の位置に縫い付ける方法です。
関節の前方に穴を開けて関節鏡を差し込んで手術するため、正常な筋肉や靭帯などの組織を傷つけずに済み、術後の治癒が良好です。
関節鏡下ブリストー法
肩甲骨に前方に突起した骨、烏口突起と呼ばれるところがあります。
烏口突起に付着している筋肉や腱の一部を骨から外し、関節の受け皿である関節窩前面に固定するという方法です。
より強固な手術方法で、適応となるのは以下のような場合です。
- 骨の欠損が大きく、再脱臼のリスクが高い人
- コンタクトスポーツや転倒リスクの高い競技への復帰を目指す人
- 重労働で肩への負担が大きい人
- てんかんなど突発的な発作があり、コントロールできない人
術後の注意点
手術後は、関節や筋肉を動かし、関節が硬くならないよう機能を保つ必要がありますが、肩関節が脱臼しやすい動きは避けてください。
まず、手術後2週間は三角巾で簡易に固定します。さらに、固定期間後も術後3ヶ月までは、以下のような動作は禁忌です。
- 手を後ろについて起き上がる
- 後ろ手を組む
- 後頭部に手を回す
肩関節の外転、外旋という脱臼しやすい動きをしないよう、十分気を付ける必要があります。
早期からのリハビリテーション
反復性肩関節脱臼のリハビリテーションは、術後すぐに始まります。
手術直後、患部はまだ不安定で運動の制限はありますが、関節可動域制限が起こらないように、運動する必要があるためです。
肩関節脱臼を早く治すには、早期からの運動が重要です!
禁忌肢位を排除し、腕の重みを支えた状態で、肩関節周囲筋の筋トレやリラクゼーションを実施します。
徐々に関節可動域や負荷量を拡大していき、日常生活動作の再獲得につなげていきましょう。
通常、約1ヶ月程度でデスクワークなどの軽作業が可能となり、日常生活に不自由を感じなくなってくるはずです。
また、3ヶ月程度で徐々にスポーツ活動や作業を再開し、6ヶ月でスポーツや重労働の完全復帰を目指します。
反復性肩関節脱臼の早期治癒と再発予防は整骨院で!
反復性肩関節脱臼は、初回から2年以内の再発率が高いといわれています。
放置しておくと日常生活が困難になるケースもあるため、治療を継続して肩の不安感を軽減し早期に治すことと、再発を予防することをおすすめします。
また、適切な治療のあとは、整骨院に通ってみることもおすすめです。
整骨院では、柔道整復師など国家資格を保有している人の施術が受けられますので、ぜひチェックしてみてください。
反復性肩関節脱臼の早期治癒と再発予防には、肩関節周囲筋の柔軟性と筋力の維持が大切です。
また、日常生活の中で脱臼しやすい動作をおこなっていないか繰り返しチェックするとよいでしょう。
整骨院で専門家からのアドバイスを受け、肩関節の不安感を早く治し、再発予防のための治療を続けてくださいね!
参考文献
【1】http://jossm.or.jp/series/flie/007.pdf
【2】標準整形外科学第12版 p,447〜449 編集者:松野丈夫,中村利孝他
【3】理学療法ジャーナルVol.30 No.6 2013年6月 p,664〜672 外傷性肩関節脱臼の機能解剖学的病態把握と理学療法 尾崎尚代