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変形性膝関節症とは?予防や治療法について解説
令和元年におこなわれた厚生労働省の調査(※1)によると、関節痛でお悩みの方の有訴者率(人口千対)は、男性で41.3ポイント、女性で69.9ポイントだといわれています。
そのほとんどが、変形性膝関節症によるもので、自覚症状がある人は全国で約1,000万人、潜在的な患者(X線診断による患者数)は約3,000万人(※2)といわれているほど。
変形性膝関節症は歩行などの移動能力の低下をひき起こし、ロコモティブシンドローム(※)の原因ともなります。
※ロコモティブシンドローム:運動器症候群。筋力・バランス力・柔軟性などの低下により移動能力が低下する状態のこと。将来的に介護が必要になる危険性が高まります。
膝関節の機能が低下すると介護が必要になることもあるので、早めの治療や予防が重要です。
今回は、変形性膝関節とはどんな病気なのか、予防や治療法について詳しく解説します。
※1:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況 III 世帯員の健康状況」
※2:介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会 「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について 報告書」
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症とは、膝関節のクッション剤である関節軟骨がすり減ることで、関節変形が起こる病気です。多くは、加齢や筋肉量の低下、肥満などにより関節に負荷がかかることが原因です。
膝関節を構成している大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)とのすき間がせまくなり、特に膝の内側に痛みや腫れが出ます。
関節内での炎症が起こるため、歩行や立ち座り時動作の緩慢さ、正座や階段昇降が困難となってしまいます。
変形性膝関節症は女性に多くみられ、なんと男性の約5倍の発症率(※3)です。40代以降、高齢になるほど発症します。
変形性膝関節症の症状
主な症状は膝の痛みと腫れ、水がたまることです。ここでは、膝の構造と病気の進行時期に合わせて発生する症状についてそれぞれ説明していきます。
膝の構造と変形性膝関節症の症状
まず、膝関節の構造について解説します。
膝関節は以下の4つの骨で構成されています。
- 大腿骨(だいたいこつ)=太ももの骨
- 脛骨(けいこつ)=すねの内側の骨
- 腓骨(ひこつ)=すねの外側の骨
- 膝蓋骨(しつがいこつ)=膝のさら
このうち、変形性膝関節症で損傷されるのは大腿骨と脛骨がかみ合ってできる関節面です。
この関節面を構成する大腿骨と脛骨の骨端には関節軟骨があり、クッション剤の役目をしています。
さらに、関節のまわりには滑膜・関節包が内側から順番に覆っています。滑膜のふくろの中には関節液という緩衝液が満たされています。関節軟骨がすり減って、炎症が起きると、以下のような状態になります。
- 滑膜が肥厚
- 関節液が黄色くにごってどろどろになる
- 関節液がたまる(水がたまる)
痛みや関節の動かしにくさが発生してきます。
変形性膝関節症の進行度と症状
関節軟骨がすり減ると炎症が起こると話しました。ここでは、変形性膝関節症が進行するとどんな症状が起こるのか進行度にわけて理解していきましょう。
初期
関節軟骨がすり減り、関節のすき間がせまくなります。立ち上がり、歩き始めなどの動作の開始時に膝の痛みが発生。いったん休めば緩和します。
中期
関節軟骨がさらにすり減りると次のような症状が現れます。関節軟骨の下にある軟骨下骨が硬くなったり、関節のふちに骨棘(こつきょく)ができ、とがってきたりと骨どうしの接触が強くなるのです。
また、骨のまわりを満たしている関節液にすり切れた関節軟骨の破片が浮遊します。関節軟骨の破片が骨を覆っている滑膜を刺激することで痛みが増してしまうのです。また、骨の空洞化が起こり、骨のもろさが目立っていきます。この時期になると正座や階段昇降が困難になってきます。
末期
関節軟骨がかなり薄くなってしまい、骨どうしが直接ぶつかり合い、激しい痛みが発生。関節がきしむ音も聞こえます。
炎症が悪化し、骨を覆っている滑膜の肥厚がみられ、安静にしても膝の痛み取れない状態です。関節変形がすすみO脚やX脚が目立っています。
立っているときに膝が伸ばしきれなかったり、大きく膝関節を曲げ伸ばしすることが困難です。日常生活動作の制限がかかっている状態といえます。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の原因は、「一次性」と「二次性」にわけられます(※4)。
一次性(原因がはっきりしていないもの) | 二次性(原因がはっきりしているもの) |
加齢肥満遺伝的なもの筋肉の衰え膝への負担が大きいスポーツ習慣 | 膝や股関節などの骨折捻挫や関節軟骨の損傷靭帯、半月板損傷大腿骨の壊死代謝性疾患先天異常 |
二次性は原因がはっきりしています。骨折や膝靭帯損傷、半月板損傷といった外傷や病気きっかけで関節変形が起こります。一次性はそれ以外の原因がはっきりしていないものです。
変形性膝関節症の原因はほとんどが一次性だといわれています。40代以降からだんだん発生率が上がることから、加齢による説が濃厚です。
関節軟骨の弾力性がだんだん低下し、関節軟骨がすり減ってしまうのです。さらに肥満や遺伝的な原因がふくむと発生率が高くなります。
※4:標準整形外科学第12版 P.687〜692 編集者:松野丈夫,中村利孝他
変形性膝関節症の診断ポイント
診断では、問診・視診・触診・痛みの検査・徒手検査などをはじめにおこないます。
その後、X線(レントゲン)検査やMRI検査にて診断の確定となります。関節変形を調べ、病気の進行度を確認します。
- 関節のすき間が狭くなっていないか。またはその程度。
- 軟骨下骨が硬くなっていないか。
- 骨棘(こつきょく)ができ骨のはしがとがっていないか。またはその程度。
- 骨の変形がないか。またはその程度。
レントゲン検査では以上のような診断ポイントをみて進行度を判定します。
病気の進行度に合わせて治療方針を決定していきます。
変形性膝関節症の予防と治療
変形性膝関節症によって骨や関節が変形すると完治できません。そのため、病気の進行を予防することが重要です。
進行度に合わせて、痛みの緩和や膝、足全体の運動機能を維持向上させる運動療法を受けます。また、重度の場合は手術により膝の機能を再生させます。
変形性膝関節症の予防法
変形性膝関節症の予防には関節や筋肉の柔軟性と筋力アップを図ることが重要です。
ストレッチやマッサージ
前ももと裏ももをにある膝を曲げ伸ばしさせる筋肉をストレッチしましょう。
筋肉の緊張をほぐしバランス良く動かす土台づくりをします。また、膝の裏やお皿、関節まわりの靭帯や脂肪組織も硬くなりやすいところです。マッサージで整えてみてください。
おすすめのトレーニング方法
膝関節症や股関節周囲の筋肉をきたえて足全体をバランス良く動かせる必要があります。関節への負担が少ないおすすめのトレーニング方法を紹介します。
- 仰向けに寝ます。
- 片膝を立てて準備します。
- 反対の膝は伸ばし、足首を反らせた状態で床から10cm程度持ち上げてください。10回程度で足を交代しましょう。
腰が反りやすい方はタオルをおしりの下に敷くとラクにできますよ。余裕がある方は足首におもりをつけて負荷をかけてみてください。
変形性膝関節の治療法
変形性膝関節症の治療は手術を受ける治療と受けない治療があります。それぞれ詳しくみていきましょう。
手術を受ける場合
手術の方法は病気の進行度や患者さんの年齢、生活スタイルになどを考慮し、以下の2種類の中から選択されます。
人工膝関節置換術
すり減ってしまった関節軟骨のかわりに、金属と特殊加工のプラスチックに置き換える方法です。
1つ目は人工膝関節全置換術(じんこうひざかんせつぜんちかんじゅつ)という膝関節全体を置換する方法。2つ目は人工膝関節単顆置換術(じんこうひざかんせつたんかちかんじゅつ)という、損傷した膝の内側のみを置換する方法です。
病気の進行度が末期で、年齢が60〜70代以降の患者さんであれば、人工膝関節置換術が選択されることが多いです。
術後、痛みなく生活が可能となり、歩行能力の回復がのぞめます。
高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)
脛骨を切り変形の角度を修正することで、関節面のかたよった過度なストレスを分散させる方法です。O脚変形の場合は脛骨の外側を、X脚変形の場合は内側を切り取り金属プレートで固定します。
40〜50代の比較的若い方で関節の変形が一部である場合に選択されます。仕事やスポーツなど積極的におこないたい方などの希望に沿った方法です。
手術を受けない場合
痛みの緩和を目的に薬物療法、装具療法、運動療法が一般的です。
薬物療法
薬物療法では、消炎鎮痛薬の内服や湿布、ヒアルロン酸関節内注射がよく用いられます。根本治療ではないため、効果は一時的ではありますが、苦痛を取り除いて生活するために継続的に必要です。
装具療法
装具療法では、膝サポーターや金属支柱の入った膝装具をつくります。関節の不安定さをサポートし関節運動を補助する機能があります。立ち座りや歩行時に使用することで痛みの緩和につながります。
運動療法
運動療法では、膝関節周囲を中心に柔軟性や筋力アップ、身体の使い方を覚えなおす訓練をおこないます。姿勢の安定性やバランス能力、持久力をつけることで膝への負担を減らし痛みを緩和することが可能です。
変形性膝関節症の治療は早期と継続的に受けることが大切!
この記事では、変形性膝関節症の症状と予防・治療法について詳しく解説しました。
変形性膝関節症は進行性の病気です。治療は早期に、さらに継続的にうけることが大切です。
いったん変形した関節をもとに戻すことはできませんが、薬や運動、手術を受けることで痛みの緩和が可能です。日常生活を少しでもラクに過ごせます。
また、ひとりひとりの状態に応じたリハビリテーションを受けることをおすすめします。
整骨院では、柔道整復師などの専門家が適切の治療プログラムを組んで継続的にサポートを受けられます。
整形外科での薬物治療などとあわせて整骨院での治療を継続していきましょう。