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肘から下(前腕)が痛い原因・治療法を解説
なぜ肘から下の前腕で痛みが出るのか? 4 つの原因
前腕で痛みを発生させる原因は主に次の 4 つが考えられます。
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それぞれ打撲や捻挫など、1回の外力で起こる怪我とは別に日々のダメージの蓄積によって起こる症状も多いのです。
それぞれの原因別に、どんな疾患が考えられるのかご紹介していきます。
1.筋肉の使い過ぎや過度な外力で筋損傷を起こしている場合
筋肉に損傷を起こしているケースでは、肘関節や手関節、手指の動きをよく使う生活習慣を持っている方に多いです。スポーツ活動はもちろん、家事による負担や、デスクワークでの軽微な負担の蓄積によってある日突然痛みを発生するケースがあります。
腱鞘炎(けんしょうえん)
特に手指を細かく使う機会が多い方に見られるのが、腱鞘炎での痛みです。
肘の下から前腕を通り、指先に向かう筋肉を使いすぎることによって起こります。手指を曲げる屈筋群の使い過ぎでも起こりますし、手指を伸ばす伸筋群の使い過ぎでも起こります。
手指の屈筋群も伸筋群も、どちらも比較的長い筋肉であり、繰り返し使って疲労が溜まりすぎることによって緊張しやすい部位でもあります。腱鞘炎は筋肉と骨を繋ぐ腱の部分と、その腱を取り囲むように周囲を覆っている腱鞘との間で摩擦が起こることによって発生する痛みのことです。
筋肉が疲労を蓄積して緊張することによって腱鞘との摩擦係数が大きくなり、炎症を起こしやすくなります。
内側上顆炎(ないそくじょうかえん)
内側上顆自体は肘の上にありますが、内側上顆から伸びる筋肉は前腕を通過して手指まで到達しています。これらは主に前腕の屈筋群ですが、ここの筋肉を使いすぎて疲労を蓄積することで内側上顆炎を発症し、肘から下でも痛みを発生させます。
女性の主婦の方に多い傾向があり、内側上顆炎になるとフライパンが持てなくなったり、ペットボトルを持つのも辛くなったりすることがあります。内側上顆炎の一種にまとめられることもある「野球肘」でも、肘から下の前腕部分に痛みを発生させることがあります。
外側上顆炎(がいそくじょうかえん)
外側上顆炎は上記でご紹介した内側上顆炎と発生の仕組みがほとんど同じで、負担をかけている筋肉が前腕の伸筋群であるときに起こります。別名では「テニス肘」と言われることもありますが、テニスプレーヤーだけの症状ではありません。
2.筋肉の緊張や内圧の高まりで神経を圧迫している場合
前腕には狭い空間に神経が密集して通過しており、腕や手首の使い方によっては慢性的に神経を圧迫した症状を発生させることもあります。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
肘から下に痛みを発生させるだけでなく、しびれや運動障害を起こすこともある疾患です。手根管とは手首の屈筋側にある部位のことで、神経や筋肉の腱などを束ねて正しい動きに導くという役割を持っています。
この手根管は靭帯によって覆われていて、ほとんど伸び縮みができないバンドのような構造をしています。その狭い空間の中に、正中神経と9本の筋肉の腱を通しているので、圧迫されやすい構造でもあります。
病態としては前腕の屈筋群を繰り返し使うことによって疲労を蓄積していることが原因の場合もありますし、腫瘍が出来ているケースや、骨折後の後遺症として発生するケースもあります。しかし、多くの場合は特発性の手根管症候群で、原因がよくわからないというのが現状です。
手根管症候群では正中神経が圧迫されている
前述のように、手根管の中に通っている神経は正中神経であり、手根管症候群によって出る痛みはほとんどの場合は正中神経の絞扼による痛みです。前腕から、手指の母指、第二指、三指、四指まで痛みやしびれを発生させることがあります。
特徴的な症状としては、正中神経支配である母指球の筋肉が徐々に痩せていき、OKサインのような手の形がとりにくくなることがあります。このため、細かい作業がしにくくなり、生活に大きな影響を及ぼすようになるのです。
3.頚椎から派出する神経を圧迫している場合
頚椎と呼ばれる首の背骨から派出している8本の神経は、首、肩、上腕を経由して前腕から手指まで届いています。その過程で神経が圧迫されるようなことがあれば、肘から下で痛みを発生させることも大いに考えられるのです。
頚椎(けいつい)ヘルニア
頚椎ヘルニアは、首にある椎間板が変形して突出し、脊柱の中に通っている脊髄や神経根を圧迫してしまいます。頚椎の5番6番あたりでヘルニアを起こせば、肘から下で常に痛みを生じさせることも多いです。
頚椎ヘルニアを起こしてしまう原因は、急性的なものと亜急性のものがありますが、多くは亜急性です。頚椎に微細な負担を長時間蓄積させ続け、少しずつ椎間板の変形を招くのです。
頚椎から派出している神経が前腕から手指までつながっていることを知らなければ、肘から下の痛みが頚椎の問題が原因で起こっていると見当もつかないでしょう。ひどい場合は座位や立位はもちろん、寝ている間でも常に前腕にしびれや痛みを生じさせることもあります。
頚椎症
頚椎症は頚椎ヘルニアと似たような発生機序で、背骨を構成している椎骨自体の変形によって前腕を支配している神経を圧迫する病態です。頚椎ヘルニアと同じく亜急性の頚椎症が多く、現代では頚椎症のリスクは増加していると言えます。
スマートフォンやパソコンの普及により、長時間の同じ姿勢を取ることが増え、筋肉の緊張や不良姿勢を招いて少しずつ頚椎を変形させていくのです。年齢によるリスクの増加というよりも普段の生活の中で首に負担がかかる猫背やストレートネックなどの姿勢が定着していれば、20代など比較的若い世代でも十分起こり得る症状でもあります。
頚肩腕(けいけんわん)症候群
首から前腕まで向かう神経を圧迫するという点では、頚椎ヘルニアや頚椎症と同じですが、骨や椎間板に圧迫されるというよりは、手指まで通過する過程で筋肉の緊張や血流の悪化によって痛みを引き起こす病態です。
パソコンが普及し始めたころの、いわゆるキーパンチャーと呼ばれる人たちに続出した疾患でもあります。現代でもデスクワークが主な仕事になっている方は同じリスクを抱えています。
首から前腕まで通過している神経は、様々な筋肉の間を縫うように走行しています。その過程で、筋肉が緊張したり関節の悪い動かし方をしたりしていると、慢性的に神経を圧迫して痛みを発生させてしまうのです。
神経を圧迫して肘から下に痛みを発生させるだけでなく、血管を圧迫したことによる症状も併発することがあるのも特徴です。痛みに加え、しびれ、ふるえ、冷え、運動障害も起こります。また、手先が真っ白になるレイノー現象を起こすこともあるのです。
胸郭出口症候群
腕神経叢(わんしんけいそう)と呼ばれる、頚椎から指先に向かう神経群を圧迫することによって肘の下まで痛みを起こす疾患です。
胸郭出口症候群はリスクが高い身体的な特徴が決まっていて、首が長い方、なで肩の女性、やせ型の男性などです。また、生活習慣がデスクワークを中心として座っている時間が長い方でも胸郭出口症候群のリスクは高まります。
胸郭出口症候群で神経を圧迫するポイントは3つで、斜角筋と呼ばれる首と鎖骨の間あたり、肋鎖間隙と呼ばれる鎖骨と第一肋骨の間あたり、小胸筋間隙と呼ばれる小胸筋と鎖骨の下あたりです。
どのポイントにも共通するのが、腕を上げ続けることによって痛みやしびれが悪化する点です。筋肉の緊張によって腕神経叢が圧迫し、肘の下や指先に痛みを発生させることもありますが、鎖骨の動き方によって神経を圧迫してしまっているケースもあります。
そのため、腕を上にあげている時間が長い美容師や理容師の胸郭出口症候群のリスクが高いことも事実です。
4.皮膚の疾患にかかった場合
肘から下の部分に痛みが出たときに、どうしても筋肉や神経が障害されて出ている痛みだと思い込みがちです。しかし、どんな動作でも痛みが悪化することがなく、原因がはっきりしない場合に考えられるのが皮膚の疾患です。
帯状疱疹
帯状疱疹はストレスが蓄積したときや、過労など何らかの原因で免疫力が低下したときに発生する病態です。ヘルペスウイルスの一種によるもので、一度水ぼうそうを経験している方なら誰でもなる可能性があります。
全身どこでも疱疹が出る可能性はありますが、最も多いのが胸背部などの体幹と腕なのです。自分でどんなケアをしても一向に良くならない痛みに関しては、意外と見落としやすい症状でもあるので頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
肘から下の痛みの対処方法
帯状疱疹以外で、筋肉や神経の圧迫が原因で出ている前腕の痛みについては、治療方法が共通する部分も多いです。
筋肉の緊張を取る
筋肉の緊張をとって血流を良くすることで、痛みが快方に向かうケースも多いです。ただ、前腕の筋肉はあまり大きな筋肉ではないため、むやみにマッサージをしてしまうとかえって緊張を悪化させてしまう可能性もあります。ストレッチなど、あまり刺激が大きくない施術方法で治療するのが安全です。
背骨のゆがみを取る
頚椎ヘルニアや頚椎症などの神経症状はもちろん、前腕の筋肉疲労が原因で起きている痛みについても、背骨のゆがみを取ることが有効です。背骨のゆがみが矯正されれば肩甲骨の動きも自然と改善され、前腕にかかる負担も大幅に軽減されるのです。
痛みのある部分だけを治療してもなかなか良くならない場合は、背骨など根本的な部分のアプローチが必要と考えてください。
薬物療法を使う
あまりにも強い痛みの場合は、痛み止めなど消炎鎮痛剤や、ビタミン剤といった薬物療法を選択することも視野にいれます。症状によってはすぐに効果を感じられないこともありますが、とにかく今の痛みにすぐ対処する方法として選択されることも多いです。